毎年5月3日に岐阜県東白川村で開催されている つちのこフェスタを初めて見に行った時 にタカブ料理を初体験しました。

いわゆる“蜂の子料理”のことなのですが、この地方では単に蜂の子を採集して食べるだけでなく、わざわざ巣ごと掘り起こし、養蜂して蜂の子を収獲する というのです。

美味い蜂の子を得るための手段なんでしょうが、それほどまでのコダワリは実に見事ですねぇ。ま、ある意味“すごく贅沢な道楽”とも言える、まさに自然を相手に遊ぶ“男のロマン”です。

つちのこフェスタで東白川村へ行かれる方は、たぶん会場内にタカブ料理のブースが出店されると思いますので、是非、そのコダワリ抜いた超珍味を味わってくださいませ。

今回はそんな男たちの、タカブへの超コダワリを紹介してみたいと思います。





タカブとは何かというと?

岐阜県の東濃地方ではクロスズメバチやシダクロスズメバチなどのいわゆる“地蜂”のことをタカブまたはヘボと呼ぶようです。

山岳地帯であるこの地方では、昔からタカブは貴重な蛋白源として重宝されておりましたが、今でもタカブ料理が根強く残っています。また、近年の健康ブームに合わせ、その栄養価が見直されてきて全国的にジワジワとブームが起きつつあるとのこと。果たして21世紀は昆虫食文化の時代となるのでしょうか?

キーワードその1:白巣より赤巣

こういった無駄な知識は人生を実に楽しくしてくれますねぇ。 “白巣”とはクロスズメバチの巣のことで、その色が全体的にグレーっぽいことからこの地方ではそう呼ばれているようです。標高300メートル以下の低い場所に営巣されるようです。

それに対しては“赤巣”とはシダクロスズメバチの巣のことで、褐色ゆえそう呼ばれるようです。こちらは標高300メートルから700メートルの高い場所で営巣されますが、シダクロスズメバチはクロスズメバチよりも大きく、活動的であるために身がプリプリしているようで、地元の人には人気があるようです。

つまり、「白巣より赤巣」というのがタカブ道のキーワードその1です。

キーワードその2:煙幕掘りより生掘り

タカブ飼育はタカブが巣を作り始めた7月ごろ、地中からその巣を掘り起こし、それを飼育施設(地元では「ヘボハウス」と呼ぶ)で養蜂するわけですが、その巣を掘り起こす方法に“煙幕掘り”と“生掘り”とがあるとのことです。

“煙幕掘り”とはその名の通り、巣を掘り起こす際、煙幕を巣に放り込み、蜂を麻痺させてから行うことを指します。これは当然、蜂に刺されないことを目的としていますが、この煙幕掘りの場合、蜂の健康をそこなったり、巣に煙が染みこんでその後の養蜂に支障が出たりするマイナス面があります。

それに対して“生掘り”とは、煙幕を使わずに、玉砕覚悟で(刺されないための防護服を身につけ)巣を掘り起こす方法です。

当然、生掘りの方がリスクが高いですが、蜂や巣を状態よく掘り起こすことができるため、美味しいタカブ料理にありつくためには、やはり生掘りが一番だとか。

「煙幕掘りより生掘り」、これがタカブ道のキーワードその2です。

キーワードその3:生が一番、空飛ぶキャビア

またもや「生」が良いという話です。

タカブ料理は佃煮のようにしたものが一般的ですが、キチンと養蜂したタカブは生でも食べられるようで、通に言わせると「生が一番」なんだそうです。

ワタシは生タカブは未経験なのですが、地元の方によれば「淡い上品な甘い味がして、ミルクとチーズを合わせたような濃厚な味が口の中に広がる。」とのこと。まさにキャビアじゃないですか!

しかし生タカブを食べるにはタカブ収獲の10月末から11月頃に地元に行かないと無理みたいですねぇ。

「生が一番、空飛ぶキャビア」、これがタカブ道のキーワードその3でございます。





これからタカブ養蜂を始めたいという方(^^)のために、ざーっと、そのやり方を説明しましょう。

ステップその1:蜂つけ

まずは掘り起こす蜂の巣を探さなければなりません。 それが“蜂つけ”と呼ばれる作業です。

7月初旬から中旬になると、女王蜂の生んだ働き蜂の数も徐々に増えてきます。この時期にタカブが飛来しそう場所に、川魚や鶏肉など、タカブのエサになりそうな新鮮な肉を竹竿の先端に刺して仕掛けておきます。

エサを見つけた働き蜂は噛みちぎって肉団子にし、それを巣に運びます。蜂はエサの場所を記憶していて、再度、エサの場所に戻ってくるそうです。

エサを運んだ蜂が戻ってきたら、今度は綿などの目印の付いた肉片を蜂に持たせて飛ばせます。ま、口で言うのは簡単ですが、どうやって蜂に“持たせる”んだか。。。 その辺りはきっと“匠”と呼ぶ世界なのでしょうなぇ。

そして、その目印のついた肉片を持った蜂を追いかけ、巣を見つけるわけです。これが“蜂つけ=蜂にくっついて追いかける”です。 飛び回る蜂を山の中を走り回るのですから、体力と気力と土地勘が無いと絶対に無理でしょうねぇ。

ステップその2:移巣 〜 掘り起こし → 移巣箱 → ヘボハウス 〜

やっとの思いで巣を見つけたら、キーワードその2で書いた、煙幕掘りか生掘りで巣を掘り起こします。掘り起こした巣は移動箱と呼ばれる小型の箱に入れて持ち帰り、飼育施設(ヘボハウス)へと移すわけです。

ヘボハウスとは自宅スペースに作られた部屋で、その中に飼育箱を何箱も置いてあるのが普通のようです。ウサギ小屋暮らしのワタシからすれば随分と待遇の良い蜂サマだなぁって感じですねぇ。

また、ヘボハウスでの飼育箱への蜂の移動は、 蜂の活動が止まる夜間にやるのが常だとか。いやー、さすが蜂の生態を研究しつくした作業工程です。

ステップその3:エサ、害虫駆除

ヘボハウスは通常窓を開け放しているので、蜂は外にエサを探しにいけるのですが、あまり遠くに行かれて事故にあったり(^^)、いなくなったりしないように、基本的にエサは人間が与えます。

タカブはかなりグルメなようで、新鮮な鶏のささ身や肝、魚肉、砂糖水などをキチンと与えます。

肉食のタカブですが、天敵もいます。トンボをはじめ、 ムシヒキアブやネジリバネ、ベッコウハナアブなど、どんな姿をしているのか想像もつかないような(^^;虫たちがタカブを狙ってやってくるそうです。

中でも一番怖いのが大型のスズメバチで、こいつらに襲撃を受けると巣が全滅してしまうのだとか。。。 そうなると、 山の中を走り回って巣を探した苦労が水の泡ですからねぇ、こりゃ、気が抜けませぬ。

ステップその4:そして、収獲のとき。。。

11月ごろになると、いよいよ収獲のときです。 自然の巣を獲るときは「秋巣を獲る」と言いますが、養蜂した場合は「箱を開ける」と呼ぶそうです。

飼育箱の中に煙幕を打ち込み、蜂を麻痺させてから立派に成長し、幼虫の詰まった巣を取り出します。おお、楽しみ楽しみ♪

東白川村や近隣の村では毎年10月末から11月初旬にかけて、この巣を競い合う「ヘボコンテスト」などのイベントが多数開かれているようです。このコンテストに参加すれば、例の“空飛ぶキャビア”生タカブを体験することができるんでしょうかねぇ。このあたりは別途、調査を続けたいと思います。 参考: 東白川村のタカブ関係のイベント情報

ステップその5:一部の巣は更に飼育 → 交尾 → 冬眠 → 放蜂

特に状態の良い巣に関しては、更に飼育を続け、女王蜂に更に産卵をつづけさせるようです。 交尾時期が近づくと女王蜂が逃げないように、ヘボハウスの窓などは閉めておきます。午前11時ごろから午後2時ごろの時間帯に交尾ははじまるようです。

東白川タカブ研究会のサイトによれば、 女王蜂は天井や壁に静止し、そこへ何匹もの雄蜂が背後から交尾を試みるのだそうです。そして相手が決まると、 最初、雄蜂が女王の背中から交尾をしていますが、やがて女王が交尾したまま体を入れ替え上下を逆転させ、雄蜂の背中(腰部)を噛み始めるのだとか。

交尾を終えると雄蜂は女王から離れ、女王は30秒程体を休めた後、ヘボハウスの壁などの隙間を見つけそこで冬眠する準備に入るようです。

この段階になったら、情報蜂をピンセットなどで小箱に移し、蔵や洞窟などの温度変化の少ない場所で保存し、冬を越させるそうです。

そして4月下旬から5月上旬になって冬眠から醒めると、ハチミツと砂糖水との混合液を散布してあげ体力を回復させてから、自然界へと放蜂してあげます。

捕獲だけでなく、キチンと育てて自然に帰すなんて、実にロハスなタカブ養蜂ですなぁ。

タカブに関しては、その言い伝え、ルーツなどなど、今後も継続して調査していきたいと思います。

是非、皆様からの情報もお願いしますデス。