もしかしたら、人類の進化なんて、イタズラ好きの宇宙人が皆に内緒で モノリス を地球に 置いてきたことから始まったのかもしれない。

そしてそのイタズラ好きの宇宙人は モノリスを勝手に置いてきたのがバレて、宇宙人の先生から “貴方が勝手なことをしたから、 折角の観察材料が台無しになったじゃないか” って怒られているのではないだろうか。

我々の進化など、宇宙人の気まぐれが起こした偶然の産物だとしたら、世の中がこんなに無秩序に成長し、 いまだに戦争や環境破壊がなくならないのも判るような気がする。

イタズラで地球人を進化させたその宇宙人は、いまごろどんな気持ちでこの地球のことを 眺めているんだろう? と、もぐちゃんは言った。

うーん、もしかしたら、もう地球のことなんか忘れて、他のおもちゃを見つけているんじゃ ないかなぁ。 と、ワタシは言った。

ワタシはマグカップのコーヒーを飲み干した。もぐちゃんのマグカップも とっくに空になっていた。空には満点の星空。ワタシは2杯目のコーヒーを入れるために、 ジェットボイルの赤いボタンをプッシュした。青い炎がかすかに もぐちゃんの顔を照らした。 炎が燃える音が辺りに響いた。

ワタシたちは結局、コーヒーを4杯づつ飲み、満天の星空の下、宇宙人や宇宙の神秘について語り合った。 煌く星空に飲み込まれてしまいそうな気分になった。宇宙の大きさと比較すると、 我々人間のなんと小さいことか! この言い古された言葉が満天の星空の下にいると、 妙にリアリティーを帯びてくるのがわかる。

こんなに大きな宇宙だもの、我々以外の知的生物がいてもなんら不思議はない。 星空の下にいると、いつもそんな考えが頭を支配する。 きっといまも、大宇宙の彼方から我々地球を眺めている誰かがいるのだ。 それは我々をほんの気まぐれから進化させた宇宙人かもしれない。

ワタシは徐々に、“宇宙からの視線”を強く感じるようになっていた。 たぶん、もぐちゃんも同じ気持ちにちがいなかった。 二人はマグカップを両手抱えながら、お互いの精神がまるで肉体を離れ、 宇宙という大いなる世界で融合してゆくような錯覚に身をゆだねていた。

そのとき、一つの星が一瞬、強い光を放ったかのように見えた。ワタシも もぐちゃんも 確かにそれを見たような気がしたのだが、二人ともなぜかそのことを口には出さなかった。

第一話おわり

(全ての星の写真はワタシが撮影しました)